会社を設立して、在留資格「経営・管理」を取得して日本に在留している方が、なかなか事業が本格化していかない、という話はよく聞きます。このままでは、在留資格を取り上げられてしまうのでは、と不安になることがあると思います。それでは、どんな場合に更新ができて、どんな場合に更新ができないかということを出入国在留管理局は具体的に開示していますので、なるべくわかりやすく説明いたします。当局では、決算年度2期分を考慮して総合的に判断するとしています。

過去2期のいずれかにおいて売上総利益がある場合

「売上総利益」とは、最終の利益ではなく少しでも売った商品やサービスから利益を得た場合です。

ビザ君ビザ君

「売上総利益」ってなんですか?

先生先生

例えば100円で仕入れたものを120円で売るといくら儲かる?

ビザ君ビザ君

20円儲かりますね。

先生先生

その20円つまり、単純に売った値段から仕入れをした値段を引いた合計が「売上総利益」というんだよ。

ビザ君ビザ君

でも、商売をするとお店の家賃や人件費などいろいろかかりますよね?

先生先生

もちろんそれ以外にかかる経費はあるよね。それらの経費を「売上総利益」から引いた金額が「営業利益」というんだけれども、この入管の通達では「売上総利益」があればという前提で次へ続きてみてみよう。

直近期末(前年度末)において欠損金がない場合

①直近期(前年度)当期純利益があり、同期末において余剰金がある場合には、事業の継続性に問題なしと判断されます。また、②直近期(前年度)において当期純損失となった場合でも、売上総利益があることを前提に、余剰金が減少したのみで欠損金がない場合でも事業の継続性に問題なしと判断されます。

ビザ君ビザ君

また新しい言葉がでてきたね?「欠損金」てなに?

先生先生

「欠損金」とは、ちょっと難しいけど赤字が原因で資本が減少していることをいうんだ。貸借対照表で利益剰余金がマイナスのときにその金額を欠損金ということになるんだ。

ビザ君ビザ君

ふ~、むずかしいね。

先生先生

上にあげている①に場合は、前の年黒字で、余剰金があるので一番健全な会社経営をしているので問題なしです。②の場合は、その年赤字であってもそれまでためていた利益が減っただけで、まだ残りがありますよって場合にはOKですよってこと。

直近期末(前年度末)において欠損金がある場合

直近期末(前年度末)において債務超過となっていない場合

事業計画、資金調達等の状況により、将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し、今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出し、事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて、原則として事業の継続性は認められます。ただし、提出した資料の内容によっては、中小企業診断士や公認会計士などの企業評価能力を有する資格者の評価の根拠が記載されている書面を提出する必要がある場合があります。

ビザ君ビザ君

今度は、「債務超過」ってまた新しい言葉だ~~

先生先生

債務超過っていうのは、簡単にいってしまえばその会社が持っている資産を全部整理しても借金の方が多い会社のこと。

ビザ君ビザ君

そうなると会社も大変だね。いつ倒産してもおかしくないよね。

先生先生

だから、入管ではあなたの会社大丈夫かどうか書類をいっぱい作って説明してくさいと言っているんだね。

直近期末(前年度末)において債務超過であるが、直近期前期末(前々年度末)では債務超過がなかった場合

債務超過が1年以上継続していない状態であることになります。その場合には、中小企業診断士や公認会計士などの改善についての評価を行った書面の提出を求められます。それにより判断いたします。

ビザ君ビザ君

今度は、前年度末で初めて債務超過になった会社についてのことだね。

先生先生

注意するのは、2期以上債務超過が続いている会社は「事業計画書」と「予想収益」を提出した上で、入管が「本当ですか?」と思った時だけ「中小企業診断士か呼応人会計士に、あなたの提出した書類信用できるか確認してきなさい!」と言っているんだけど、前期で初めて債務超過になった会社には「はい、債務超過になってしまいましたね。中小企業診断士か公認会計士が大丈夫ですよっていうお墨付きをもらってきなさい。」って言っているんだね。

直近期末(前年度末)及び直近期前期(前々年度末)においてともに債務超過である場合

債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかったときは、事業の継続が厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされていないことから、原則として事業の継続性があるとは認められません。

先生先生

これはかなり厳しいね。2年以上債務超過が続くと事業の継続性がないと認められないというと・・・

ビザ君ビザ君

そうなるとどうなるの?

先生先生

少なくとも「経営・管理」での在留資格の更新はできなくなってしまうんだね。

直近期(前年度)及び直近期前期(前々年度)においてともに売上利益がない場合

2期連続で売上利益がない場合、たとえ営業外損益、特別損益があった場合でも事業の継続性は認められません。

ビザ君ビザ君

またまたまた・・・「営業外損益」とか「特別損益」ってなに?

先生先生

ここは細かく説明すると大変だから、ざっくり説明するよ。例えば飲食店は料理を売って仕入れを引いた金額が売上総利益だよね。それが2年連続でなくて、今回のコロナウイルスによる持続化給付金や土地などの資産を売って得た収益だけでは認められませんと言っているんだよ。

最後に出入国管理庁の通達に乗っている事例をそのまま記載しておきます。

事例1
当該企業の直近期決算書によると,当期損失が発生しているものの,債務超過とは
なっていない。また,同社については第1期の決算である事情にも鑑み,当該事業の
継続性があると認められたもの。
参考指標(売上高総利益率:約 60 %,売上高営業利益率:約- 65 %,自己資本比率
:約 30 %)
事例2
当該企業の直近期決算書によると,売上総損失(売上高-売上原価)が発生してい
ること,当期損益は赤字で欠損金もあり,また,欠損金の額は資本金の約2倍が発生
していることから,当該事業の継続性を認められなかったもの。
参考指標(売上高総利益率:約- 30 %,売上高営業利益率:- 1,000 %超,自己資本
比率:約- 100 %)
※各種計算の手法は提出された直近期の決算書をもとに以下のとおり算出(利益はプ
ラス,損失はマイナス。)。
売上高総利益率=売上総利益(損失)÷純売上高×100
売上高営業利益率=営業利益(損失)÷純売上高×100
自己資本比率=自己資本(剰余金又は欠損金を含む)÷総資本×100