令和2年8月に出入国在留管理庁から在留資格「経営・管理」に関する基準が発表されましたので、なるべくわかりやすく解説していきます。

「経営・管理」の事業所の確保

事務所あるいは事業所は、「経営・管理」の在留資格を取得するにあたり重要な項目です。それでは、これは事務所と認められるかNGかについて個別の事例を通して見てみましょう。

  • マンスリーマンションのように短期間の賃貸契約で借りる物件⇒× 安定した場所を確保しているとは認められません。
  • 屋台などの簡単に処分することができる場所を事業所として利用する⇒× 一定の場所、一区画を確保しているとは認められません。これは、屋台の利用がすべてだめだというわけではありません。屋台や自動車の販売をする事業を運営するために、事務所などのスペースを確保できていればOKだと思われます。

住居用に賃貸している物件の事務処理用について

自宅として借り受けている物件を事務所として借りるにあたり、以下のの要件が必要とされています。

  • 賃貸借契約書に「事務所としての使用を認める」など住居以外の目的で使用することが可能であると契約書に明記されていること。
  • 借主と会社(つまり申請する人と会社)の間で、事業所として認めるという契約書が存在すること。
  • 借主と会社の間で公共料金(電気代水道代など)の支払に関する取り決めを明確にすること。
  • 事業を行うことに必要なもの(机やパソコンなど)を備えた単独の部屋(事業専用の部屋)を持っていること。⇒ということは、ワンルームマンションなどで住居と事務所の件用は認められません。
  • 看板や表札などで会社の事務所・事業所などの明示がされていること。

 

具体例

出入国在留管理庁は、具体的に以下のような実例を挙げて解説していますので、そのまま掲載しておきます。

事例1
Aは,本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更許可申請を行った
が,事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていた
ものの,貸主との間で「会社の事務所」として使用することを認めるとする特約を交
わしており,事業所が確保されていると認められたもの。

つまり、契約書に「住居」として書いてあっても特約に「会社の事務所」としての使用を認めると書いてあればOKです。

事例2
Bは,本邦において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資格認定証明
書交付申請を行ったところ,本店が役員自宅である一方,支社として商工会所有の物
件を賃借していたことから,事業所が確保されていると認められたもの。

本店登記が自宅であっても、実際に事務所として確保されている場所があれば、OKということです。

事例3
Cは,本邦において株式会社を設立し,販売事業を営むとして在留資格認定証明書
交付申請を行ったが,会社事務所と住居部分の入り口は別となっており,事務所入り
口には,会社名を表す標識が設置されていた。また,事務所にはパソコン,電話,事
務机,コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認され,
事業所が確保されていると認められたもの。

この事例は、賃貸なのか所有なのか明確に書いていませんが、おそらく戸建ての物件なのでしょう。入口が別になっており事務所として、机なのどの什器が設置されている部屋が確保されており看板などの標識があればOKということです。

事例4
Dは,本邦において有限会社を設立し,当該法人の事業経営に従事するとして在留
期間更新許可申請を行ったが,事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ,
郵便受け,玄関には事業所の所在を明らかにする標識等はなく室内においても,事
業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず従業員の給与簿・出勤簿も存在せ
,室内には日常生活品が有るのみで事業所が確保されているとは認められなかった
もの。

こんどは、不許可だった事例です。「有限会社」とあるので、新設会社なのかいつの事例なのか不明ですが、この事例から以下の点に注意してください。

  1. 郵便受けには、会社名を明記しましょう。そして、申請時には写真を撮って提出しましょう。
  2. 看板・表札などを明示しましょう。そして、申請時には写真を撮って提出しましょう。
  3. 机、パソコンなど事業に必要なものをそろえておきましょう。そして、申請時には写真を撮って提出しましょう。
  4. 賃金台帳、出勤簿などの帳票類は事務所に備えおきましょう。そして、申請時には写真を撮って提出しましょう。

事例5
Eは,本邦において有限会社を設立し,総販売代理店を営むとして在留資格認定証
明書交付申請を行ったが,提出された資料から事業所が住居であると思われ,調査し
たところ,2階建てアパートで郵便受け,玄関には社名を表す標識等はなかったもの。
また,居宅内も事務機器等は設置されておらず,家具等の一般日常生活を営む備品の
みであったことから,事業所が確保されているとは認められなかったもの。

こちらは明らかに「有限会社を設立し」と書いていますので、2006年(平成18年)4月以前の事例でしょうか。こちらは、明らかに不許可になる典型的な事例です。

事例6
Fは,本邦において有限会社を設立し,設計会社を営むとして在留資格変更許可申
請を行ったが,提出された資料から事業所が法人名義でも経営者の名義でもなく従業
員名義であり同従業員の住居として使用されていたこと,当該施設の光熱費の支払い
も同従業員名義であったこと及び当該物件を住居目的以外での使用することの貸主の
同意が確認できなかったことから,事業所が確保されているとは認められなかったも
の。

これもまた「有限会社」ですので古い話だと推定できますが、以下の点に注意してください。

契約の名義が従業員のまま申請しないように注意しましょう。これは、以下のような流れでこのような事態になる可能性があります。

  • 会社を設立するためには、本店住所が必要なためにとりあえず在留資格のある外国人従業員や日本人の名前で事務所を契約します。
  • その後、その場所で会社の設立の登記をしてそのまま入管に申請を出してしまうケースです。

このようなケースを避けるために、賃貸契約を結ぶにあたり以下のことを告知しましょう。

「この事務所を借りた後、この場所に会社を本店として登記するので、登記完了後は賃借人の名義を会社にして再度契約書を作成してもらうか、変更の覚書を作成してください。」

というような内容を明示しておきましょう。

また、電気代やガス代などの契約は、事務所単独で使用する場合は必ず会社名義で契約しましょう。

インキュベーションオフィスについて

インキュベーター(経営アドバイス、企業運営に必要なビジネスサービス等への橋渡しを行う団体・組織)が支援し、それらの団体が一時的に貸与するインキュベーターオフィスは、事務所として申請が可能となっています。