会社の設立を決めたら、会社の種類を決めます。会社にはいろいろな種類がありますが、一般的に多いのは「株式会社」と「合同会社」です。その他にも「合名会社」や「合資会社」などがありますが、あまり一般的ではないのでここでは説明を省きます。

株式会社と合同会社

「株式会社と合同会社の違いは何ですか?」とよく聞かれます。外国人のお客さんに細かいことを全部説明しても分からないので次のような要点を伝えます。

  1. 名前が違います。日本では、一般的に「株式会社」の方が大きい会社に思われます。
  2. 株式会社は、必ずしも資本金(最初に会社を設立するために必要なお金)は役員(株式会社では、役員のことを「取締役」といいます。社長のことを「代表取締役」といいます。)が出す必要がありませんが、合同会社は出資金(やはり最初に準備するお金です。)は、合同会社の役員(合同会社では役員のことを「社員」といいます。社長は、「代表社員」といいます。)が出す必要があります。
  3. 登録免許税(設立の時にかかる税金)が違う。株式会社は15万円、合同会社は6万円
  4. 株式会社は公証役場で定款の認証が必要。認証費用は概算で55,000円程度。

以上の4点が大きな違いです。

1について(名前が違うこと)は、例えば飲食店を経営するのならばあまり会社名が前面に出ませんので、合同会社でもあまり問題ないかと思います。(例えば中華料理店は「〇〇楼」とか「〇〇亭」といった名前を看板に書きますよね?)貿易商社のように名刺を出して営業するような場面が多いときには、まだまだ日本では株式会社の方が名前有利かもしれません。ただし、あのアマゾンジャパンも合同会社なので、これからは徐々に同じように見られていくと思われます。

2について(資本金の出資者が役員以外でも可能ということ)は、上場企業になる場合は必要ですが、それ以外に役員以外が出資するケースは少ないと思います。万が一上場することになれば、組織変更(合同会社から株式会社に変更)することは可能です。

3と4については、圧倒的に合同会社のほうが安く済みます。

以上のことから、特に会社名にこだわりがないのであれば、安く済む合同会社をお勧めしています。その他にも多少の違いはありますが、設立の時点ではあまり気にしなくても大丈夫です。

資本金とは

株式会社であれば「資本金」、合同会社であれば「出資金」と名前は違いますが、最初に準備するお金が必要です。法律では1円からできるのですが、入管で「経営・管理」の在留資格を取得するには最低でも500万円必要になります。(ちなみにあなたの在留資格が「永住者」「永住者の配偶者」「定住者」であれば資本金の額は、いくらでも構いません。)

この500万円をどうして貯めるかという問題があります。自分で仕事をして貯めれば問題ありませんが、少ない金額とは言えないので親せきに借りたり親に借りたりすることがあります。その場合には必ず借用証を作って入管にコピーを提出します。

ここで注意しなければいけないのが、他人から借りたお金を会社の利益から返せばよいと思っている方がいます。残念ながら、それは違法です。なぜなら、借りたのはあなたであり会社ではありません。ですから、会社からは役員報酬をもらって、その報酬から返済していきましょう。

入管に提出するときに次のようなことも注意しましょう。「返済計画を毎月10万円ずつ予定している人が、役員報酬を20万円にして家族4人で生活します」、という人がいますが、どう考えても残りの10万円で家族4人が生活していくのは無理ですので入管は許可しません。返済計画と役員報酬のバランスを考えて設計してください。

もう一つ注意しなければいけないのは、人に借りて銀行通帳に500万円入金して、会社を設立した後すぐにお金を銀行からおろして返そうとする人がいます。これは「見せ金」といって犯罪行為になります。絶対にしないでください。

では、「500万円の資本金は使ってはいけないの?」と思われる方もいるかもしれません。それは違います。事務所やお店を借りたり、運転資金に使うことはできます。もし、会社設立前にお金が必要であれば、一度個人で立替えておいて会社設立後資本金から戻してもらいましょう。

資本金とは、最初に事業を立ち上げるときに、あなたが出資するお金です。くれぐれも会社と個人を混同しないようにしましょう。

銀行口座について

最初に500万円の資本金を入金するのは、まだ会社が設立されていないのであなたの個人口座です。会社ができたらなるべく早く会社の銀行口座を作りそこに移しましょう。ところが、銀行では口座を作るときにあなたの在留資格をチェックします。あなたの在留資格が「経営・管理」か「永住者」などの身分系の在留資格でなければ、銀行は口座を開設してくれないようです。会社の銀行口座が開設されていなければ、最近のコロナ給付金などの申請もできません。もちろん仕入れや入金なども銀行口座がないととても不便です。もし、あなたの在留資格が「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格や「留学」などであれば、なるべく早く「経営・管理」に変更しましょう。(とはいえ、入管での審査期間は長いです。)

外国人の方が起業し、口座開設しようとすると銀行は「マネーロンダリング(資金洗浄)」に使うのではないかと、相当疑いをかけられ、在留資格を変更してもなかなか口座開設はしてもらえません。大手の銀行ほど審査が厳しいようです。私の周りを見ると比較的、地方銀行や信用金庫のほうが相談に乗ってくれているケースが多いようです。