今、入管法の改正の記事が毎日のように紙面を賑わせています。ただ、普通の人は詳しくは理解できないことが結構あると思いますので、なるべくわかりやすく解説をします。

現状の入国管理

今の入管法では、基本的に就労目的で日本に来ていただく外国人は、IT関係の仕事であったり英語の先生であったりというホワイトカラーの職業か、中国料理やインド料理のコックさんのような専門職の人しか日本に来て仕事をすることができません。

じゃあ、なんであんなにコンビニや居酒屋で外国人が仕事してるの?と疑問に思われる方が多いと思います。東京都内で昼食を食べたりコンビニに行くと、もはや外国人の店員の方が多いと感じている方は多いでしょう。あの方たちは、一番多いのは学生アルバイト。その次に家族滞在という資格で、家族の誰かが上記のようなホワイトカラー職や専門職で日本に来ている方と一緒に来ている妻や子供がアルバイトとして働いています。

もっとも、彼らは週に28時間しか働くことができないので、それを超えて仕事をしているとオーバーワークになります。

技能実習という資格

そこで、入管法は「技能実習生」という資格をつくりました。これは、あくまでも日本の建設や農業などの技術を発展途上国の若者に覚えてもらい、母国に帰って役立ててもらいたいという建前で行われています。

「実習」とは、本来であれば習う人がお金を出して「実習」を受けるはずなのですが、給料をもらえます。ということは、雇う側も雇われる側も実質は労働者として働いているという認識なのです。まったく、ここから矛盾だらけの資格になっています。

「技能実習」を受け入れている業界は、日本人のなり手が少ない3K職場がメインです。また、「技能実習生」を雇用(?本来なら、技能実習生に技能を教えてあげいるというべきなのでしょうが)しているは、ほとんどが中小零細企業です。

ここに大きな溝が生まれてきます。まず、実習生の側から見ると彼らは当然「人間」です。よく「労働力を入れようと考えたら来たのは人間だった。」といわれますが、まさにその通りです。発展途上国から、目を輝かせてくる若者もいますしそうでない人もいます。それは日本人でも同じです。ただし、彼らと日本人と立場が大きく違う点があります。彼らは母国の「送出し機関」というブローカーに日本円で50万円~150万円くらいのお金を借金してきています。この金額には現地での日本語教育や来る時の飛行機代などが含まれていますが、彼らから見れば相当の借金です。

次に雇用する側を見てみると、大半の企業が紳士的に外国人技能実習生と接しているのですが、一部の会社経営者は人を人として扱わず外国人に差別意識をもって見ている方がいます。また、文化の違いを理解できず殴ったり怒鳴ったりする雇用主もいます。ここが、多分一番の問題なのかと思っています。「郷に入れば郷に従え」という諺を強者の側から振りかざして怒りまくる人がいます。

たとえば、時間に関する観念が「日が出ている時間」と「日没後の時間」くらいの観念しかない国の人にしてみたら、5分遅れたから怒られるということは、日本に来た当初は到底理解できないことでしょう。むしろ時間の観念について言えば、世界的にみると日本人の方が特殊で、世界どこに行ってもこれだけ時間に忠実な国はないでしょう。

もちろん、実習生側にも問題がないわけではありません。しっかり契約通りに企業が給料を支払っているのに、悪い奴の手ほどきで、より高い収入を得られる仕事先を見つけて「逃亡」するケースもあります。もちろん、今の入管法では技能実習生に職業選択の自由はありませんので不法在留になります。

特定技能

今回新しくできる在留資格に「特定技能1号」と「特定技能2号」という資格があります。2号の話は、置いておきますが(まだほとんど内容が決まっていないので)、特定技能1号という資格はいわゆる単純労働者を「労働者」として受け入れる初めての法律なのでこれだけ騒ぎになっています。

特定技能1号になるには2つの方法があります。一つは試験を受けて合格して資格を取得する人、もう一つは前述の「技能実習」を3年以上終了したことにより資格を所得する人です。「技能実習制度」は、本来であれば「母国に帰って発展途上国のために日本の技術を生かす」ためのはずですが、今回の法律は日本に引き留めることになります。「これでは、日本の技術を発展途上国のために伝える研修の成果が役には立たないではないか!」ということになりますよね。

やはり、技能実習というのが矛盾だらけでおかしい制度だということで野党は反対しています。国会の論戦を見ていると確かにまだ中身がほとんど決まっていない状態で「こんな状態で法案を通して大丈夫なの?」と私も心配になります。

期間は最長5年間です。つまり、技能実習の5年間と特定技能5年間合わせて最長10年間日本に在留できるのですが、家族を呼べない資格ということで問題になっています。ただし、家族を呼ぶということは単純な問題ではなく、必ずしも「かわいそう」だけではすみません。この話題は別の機会でさせていただきます。